誰でも、自分の身体に突然異変が起きて、仕事や日常生活がままならなくなるなんてことを想定してはいません。普段健康な人ほど、いざ怪我や病気になったときにはショックを受けるものです。
せめて体験を共有し、知識を得ることで、少しは自分の危機に備え、他人を大変さを思いやることができるかもしれません。
先日、石崎公子さん主催の、travessia トラベシア エンディングノート講座にて、12年前に脳梗塞で倒れ、その後仕事に復帰した方の体験談を聞く機会がありました。
対面でご本人の肉声で、静かな熱意を持って語られるリアリティのある内容は、「そのとき」の状況や当事者の気持ちを、実感を持って伝えてくれました。
様子見は とにもかくにも 命とり
お話してくださったのは、川勝弘之さん。生命保険会社にお勤めのかたわら、現在は、脳卒中予防を広めるためのさまざまな啓発活動に関わっているそうです。
現在60歳の川勝さんは、12年前48歳のときに、自宅で朝4時にベッドから立ち上がろうとして、半身が麻痺して転倒。一瞬詰まった血管が、血栓が流れて元に戻ったために、麻痺はまもなく収まりました(一過性脳虚血発作)。
このとき、同室にいた奥さんは、「治ったね。疲れだよ。このまま寝ていればいい」と言いました。しかし、息子さんがネットで検索をして、「これは脳梗塞だから救急車を呼んだほうがいい」と判断。結果としてこれが川勝さんを救ったそうです。
半身の麻痺からリハビリを経て回復、2ヶ月後には仕事に復帰。現在ハンデを負いつつも、仕事をして、日常生活を送ることができています。
この体験から川勝さんは、脳梗塞では症状を軽く見ず、すぐさま救急車を呼ぶことが重要だと痛感しました。このタイミングで病院に行かず、しばらく様子を見ているうちに再度脳梗塞がガツンと起きて、重い後遺症が残り、寝たきりになるケースが多いのだそうです。
様子見は とにもかくにも 命取り
これは川勝さんが作った標語で、2015年度脳卒中週間(5.25〜5.31)標語に選ばれました。
夜が明けてから病院に行ったのでは、遅いのです。
今は、障害からの回復に有効な「t-PA(ティーピーエー)」という薬剤がありますが、これは発症から4.5時間以内に投与しなくては効きません。現実的には、発症から2時間以内に受診し、3時間以内に治療を開始しないとならないのです。一刻を争う重要性がわかるでしょう。
ためらわずに救急車を呼んで! チェックポイント3つ
「この症状がひとつでもあったら救急車!」という3項目のチェックを教えていただきました。
川勝さんは、次のようにおっしゃっています。
「『顔、腕、言葉ですぐ受診』という言葉を部屋の中に掲示して、毎日、呪文のように唱えることで、身につけてください。そして様子がおかしいと感じたら次の(1)〜(3)を行ってみて、ひとつでも該当したらすぐにQQ車を呼んでください」
(1). 顔で「イー」
青のりが前歯についていないかチェックするように、口を「イー」として鏡を見ます。
顔に麻痺があるときは、口や顔の片側がゆがみます。
(2). 腕をあげて5秒
手のひらを上に向けて、腕を前にあげて肩の高さで差しのべて、そのまま5秒キープ。
片側に麻痺があると、あげているつもりなのにあがらず、片手が下がります。
(3). 言葉「太郎は花子にりんごをもらった」
ハッキリ口に出して、短い文章をしゃべってみます。
ろれつが回らなくなると、「ら行」の音に異常が出ます。
文章はなんでもいいけれど、「ら行」の音が入るものがわかりやすいそうです。
「たろ(R)うは花子にり(R)んごをもら(R)った」
「健康で」「元気に」過ごすことの大切さを思う
倒れてからの入院中、川勝さんは「どうしてこんなことに」と考え続けたそうです。それは退院して仕事に戻ってからも、2年間も続いたとか。仕事に復帰はできても、後遺症が残り、前と同じではない。通勤ラッシュに身体が耐えられないなど、生活には絶えず不安がつきまとうとのことでした。
私も、父の心臓病が発覚したとき、「今まで風邪もひかないほど元気だったのに、なんで? どうして? 一体何が悪かったの?」という考えにとらわれ、苦しい思いをしました。
しかし、明確な因果関係はない。それが病気の残酷なところです。不摂生がたたるような生活習慣病もありますが、かくたる原因がなくても、体にいいものばかり食べていたとしても、突然つかまることがあり、逃れることはできない。病気の怖さです。
健康であることは立派な生活をしていることの功績ではありません。なのに今の健康ブームの中では、「これをやっておけば健康でいられるはず」と勘違いしがちです。それは誤解であり、根拠のない盲信で、ある日突然崩れます。
「かなうことなら、全力で走りたい。いまはできなくなったことだから」と川勝さんはおっしゃいました。
体が動くのに、運動不足の身としては耳が痛い。楽しんで体を動かす、健康を実感するということを、もっと日常の中で味わわないともったいない! という気になりました。
体験者にしか語れないことがある!
そしてもうひとつ強く感じたのは、「体験者にしか語れないことがある」ということ。
世の中に、病気予防の知識を教える専門家の言葉は多々ありますが、自ら体験した人の言葉、これほど強く伝わるものはありません。
病気に苦しむ人、向き合う人、復帰した人、世話をする家族、見とった家族、見守る周囲。どの立場からも、その体験をした人にしか語れない、残すべき言葉があります。
自分史には、病気と向き合う日々を記して残す「闘病記」というジャンルがあります。家族の立場から書いた「看病記」もあります。どんな体験も、書くことで整理され、新たな意味を持ち、理解者との出会いにつながるはずです。
書いて残す、そのお手伝いをします。
あなたの病気の体験記を、なんらかのかたちでまとめてみたいと思うならば、自分史入門講座でお待ちしています。
【こちらもあわせてご覧ください】
・気づいたら続いていたことに「自分が本当に求めているもの」がある。
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【参考】
・脳卒中プロジェクト(三井住友海上あいおい生命について/CSR活動)
・公益社団法人 日本脳卒中協会
・travessia エンディングノート講座
・救急車利用マニュアル A guide for ambulance services - 総務省消防庁
↑プリントして電話の近くに置いておくことをおすすめします! PDFで、日本語版/英語版/中国語版/韓国語版があります。日本にお住いの外国人の方にも。
Information
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自分をふりかえる・知る・つながる・未来へ進む「自分史」の入門講座。NPO法人 新現役ネットのプログラムのひとつとして開講予定です。「自分史」をかたちにすることに興味のある、中高年世代の初心者の方が対象です。
くわしくはこちらの記事をご覧ください。
開催日時:
2016年7月14日(木)11:00-12:30
2016年7月21日(木)11:00-12:30
2016年7月28日(木)11:00-12:30
開催場所:
新現役ネット田町会議室(東京都港区芝)
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