以前、ミニバラのうどんこ病の応急処置を酢水でおこなっていることを書いたところ、多くのアクセスをいただきました。自宅に薬剤の買い置きがないときに、ふと見たら白いカビのもこもこを発見して「ぎゃーっ」となったようなときなど、酢水はとても便利です。ごく初期のうどんこ病なら、そのまま収まることもあります。
でも、うどんこ病はとても根強く、仮に一旦収束したとしても、条件が揃えばまた発生します。
本気で対策しようと思ったら、市販のスプレー式の薬剤を噴霧して、予防・治療するのが有効です。
バラの育て方の本や、専門家の「育て方」には、使用する薬剤について細かく書かれていたりしますが、家庭のベランダガーデニングには、あまり現実的ではありません。ベランダに数鉢ある程度のミニバラなら、「うどんこ病にもきく」と書いてある、このような市販の、薄めずにそのまま使うタイプの、スプレー式の薬剤をシュッシュすれば十分ではないかと思います。
【こちらも合わせてご覧ください】
・バラの豆知識006:うどんこ病の応急処置には酢水。
・バラの豆知識009:広範囲のうどんこ病は、薬剤と酢水のWで。
【参考】
・うどんこ病の防除 - 村田ばら園
・殺虫殺菌剤 - 住友化学園芸
・園芸用品 - フマキラー
うどんこ病対策のポイント3つ
1. 予防にまさる対策なし。
早期予防、もしくは早期発見してすぐの対処が肝心です。予防は薬剤でおこなってください。
酢水に予防の効果はありません。「殺菌」効果もないそうです。お酢にあるのは、細菌の増殖を抑える「静菌」効果。そのため、初期のうどんこ病の広がりを抑えることができるのではと思われますが、それだけです。
酢水と同じように、重曹水が初期のうどんこ病の手当てに有効という情報もネットで散見しますが、我が家では未確認です。薬害が出やすいという声もあるので、濃度や使用頻度については、注意が必要かと思います。
2. 3つの条件がそろうと発症する。
- 病原菌
- エサ(バラ)
- 増殖に適した温度と湿度
病気のもとになる菌も、エサとなる植物も、1年中そこらに存在するため、「いつでも発生しうる」といえます。しかし、菌の増殖に適した温度と湿度がそろったタイミングで出るので、「発生する時期が限られる」ともいえます。ですから、発症したときにその都度きちっと対応していると、やがて季節がすぎて出なく(出にくく)なります。
3. 元気で丈夫なバラは、自分の力で病気をはねかえす。
バラは病虫害に弱いとよくいわれますが、それは品種によります。「初心者向け」で「病虫害に強い」といわれる品種では、やわらかい新芽やつぼみが粉を吹くことまでは避けられませんが、しっかりと成長した葉や茎まで手酷く広がったり、その結果枯れたりすることはまずありません。あまり神経質にならず、出たら広がらないようにする程度の対処で、うどんこ病の季節を乗り切ることができます。
バラを元気に丈夫に育てておけば、ダメージがあったときの回復も早いものです。日頃から適切に水をやって、よく日に当てて育てましょう。
薬剤散布時の注意
かけすぎない。指定の散布基準を必ず守る。
1回シュッシュしてうどんこ病が収まらないからと、短期間のうちにまたかけたりすると、薬害が出ます。
私は一度やらかしました。葉っぱが全部落ちて、うどんこ病のときよりひどい状態になって、涙目になりました……。
基本的に、「殺菌」効果があるということは生き物に有害ということで、病虫害を防ぐどんな薬剤も、ある程度は植物にも有害だと考えてください(もちろん人間にも)。病気や虫にはきくけれど、植物には害にならない、その適量を決してまちがえないことです。
同じ系統のものを連続して使わない。
薬への耐性がついて、効きにくくなるといわれているためです。
私は、有効成分を見比べて、違う系統のもの2種を併用して、同じものを使う場合も間隔を長く空けるようにしています。また、使っている薬剤がなくなったら次に購入するのはできるだけ、また別の系統のものにします。
例)ベニカXスプレー(住友化学園芸)→有効成分 :ペルメトリン、ミクロブタニル
モスピラン・トップジンMスプレー(住友化学園芸)→有効成分:アセタミプリド・チオファネートメチル
注意書きをよく読んで守る。
スプレーを直接吸わないよう、素肌にあまりつけないよう、洗濯物などにかからないよう、気をつけます。もし素肌についたら、できるだけ早く水で洗い流しましょう。風の強い日は、散布を避けます。
その他の注意
我が家での薬剤の使い方
- 系統の違う薬剤を2種(AとB)、デンプン系の比較的安全な薬剤を1種、用意する。
- 毎週日曜日を、薬剤散布日と決める。
- 第1週:薬剤A
→第2週:デンプン系
→第3週:デンプン系
→第4週:デンプン系
→第1週:薬剤B
→第2週:デンプン系
→第3週:デンプン系
→第4週:デンプン系
→はじめに戻る
このローテーションで、4〜6月のチュウレンジバチとうどんこ病の時期を乗り切ります。
これだと、薬剤Aも薬剤Bも、ほぼ月1回、年に1〜2回程度の散布になります。
これをきっちり守っていると、病虫害をほぼ予防できます。が、お気楽ガーデニングの私はどこかで抜けが生じて、隙をつかれることが多いです。その場合は、発見したときにできるだけ早く対処します。
予防しきれず、うどんこ病が出た場合、しばらく薬剤の散布をしていなかったときは、患部を酢水で洗って薬剤散布します。スケジュール通り散布していたのに出てしまったときには、1日おきぐらいに患部を酢水で洗ってしのぎます。薬剤を散布する頻度を上げることはありません。
【追記】
薬剤のローテーションの表記にまちがいがあったので、修正しました。(2016.06.12)
デンプン系の薬剤について
ベニカマイルドスプレー(住友化学園芸)→有効成分:還元澱粉糖化物
カダンセーフ(フマキラー)→有効成分:ソルビタン脂肪酸エステル(ヤシ油とでんぷんからできています)
このようなデンプン系の薬剤は、薬や病菌を包み込んで窒息させ、固めて退治するものです。そのため比較的安全で何度も使えて、薬剤抵抗性もつきにくいのがメリットといわれています。
しかし一方で、化学殺虫・殺菌剤を含んでいないため、「浸透移行性」がなく、長く続く予防効果はありませんし、虫や菌に直接かけないと効果がないというデメリットもあります。
私は、バラに関しては、浸透移行性のある薬剤と、デンプン系の薬剤を併用するのが効果的かつ安全ではないかと考えています。
うどんこ病があまりにひどくなってしまったら
粉がついたところが広がって、すべてを酢水で洗うのが難しいほどになったら、粉がついた葉やつぼみを切り落とし、ビニール袋などに包んで捨てます(菌を植物に触れるところに捨てないようにしてください)。その期の花はあきらめて、株を休ませましょう。粉がついていない葉は、光合成に必要なので、できるだけ残します。短めに切り戻しておくと、また新しい枝葉が出て、四季咲きの品種なら、秋にはまた花が楽しめます。
家庭菜園があるときは
バラなど観賞用の草木と、人が口にする食用の野菜とでは、散布の基準が異なります。鉢の置き場所を分けるなどして、きちんと区別して管理します。
上でご紹介しているのは、あくまで2016年現在、ミニバラ歴10年の、個人のバラ愛好家である我が家での対処法です。専門家やプロが勧める、ほかの予防法などもよく研究して、ご自身の判断で参考にしてくださいね。
風邪をひかない子供がいないように、うどんこ病の出ないバラはないといってもいいでしょう。過敏に神経質に「絶対に出ない環境」を作り上げることを考えるよりも、「多少病気が出ても構わず育ち、花が咲く」ような元気なバラを育てるよう心がけて、バラと暮らす日々を楽しんでください。
【こちらもあわせてご覧ください】
・バラの豆知識006:うどんこ病の応急処置には酢水。
・バラの豆知識009:広範囲のうどんこ病は、薬剤と酢水のWで。
・バラの豆知識002:初めてのミニバラを買って幸せになるために。注意点5つ【前】
・バラの豆知識003:初めてのミニバラを買って幸せになるために。注意点5つ【後】
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